慶應義塾大学 - 電気自動車研究室
コ・モビリティ社会の創成
将来のクルマ社会を想像してみましょう。
まずは会議の様子です。それぞれが自分の乗り物に乗って会場に集まります。中心でこちらを向いているのが司会者の乗り物でしょうか。集まる場所は広場でも大きな建物の中でも海辺でも構いません。乗物に乗ったまま、話し合いがなされます。
買物はどうなるでしょうか。スーパーの中まで自分の乗り物で移動し、好きな物を手に取り、ここを出る時に費用が自動的に支払われます。
テーマパークに遊びに行くときには、自分の乗物に乗ってそのまま遊具で遊ぶことができます。
乗物を使った新しい遊びも考えられます。岩山のようなところのどの高さまで行けるかを競う競技なんかどうでしょうか。
さらに、病院に行くときには自分の乗り物で行き、それに乗ってそのまま診察してもらうことが一般的になるかも知れません。
ところで自動車社会は環境とエネルギー問題のほかに事故と渋滞という重大な問題を抱えています。
これらの問題のうち、環境とエネルギー問題は電気自動車により抜本的に解決ができます。
しかし、事故は相変わらず深刻な問題として残ります。現在の交通事故者の数から人間の一生の間に交通事故で亡くなる人の確率を求めると200人に1人です。交通事故に遭う確率は3人に2人という大きな数字になります。
このような事故を抜本的に解決するのは自動運転技術です。原理的にはすでに実用的な技術になっています。カーナビに付いているGPSセンサーと地図情報をもとに、アクセル、ステアリング、ブレーキの操作を自動的に行えば目的地まで到達できます。
さらに障害物センサーを取り付ければ、他の車や通行人との衝突を防ぐことができます。
そして自動運転が可能になると車体と車体の間隔を縮めて走ることができるので、渋滞もなくなります。
電気自動車は車の速度や加速度を高い精度でコントロールできます。このため、自動運転の技術は電気自動車技術と融合して、実用的な技術となります。
車が自動運転になると多くのことが変わります。
まず、衝突安全のための空間がいらなくなるので車体が小型化します。また、電気自動車での集積台車構造を利用すると主要部品がすべて床下と車輪の中に挿入されるので、ここでも小型化が可能です。すると幅80cm、長さ1.5mほどの大きさの車体で1人用の車であれば実現が可能です。このことは車が自由に建物に入っていけることを意味します。道路と建物の堺がなくなるということです。
このことにより、誰でもが、いつでも、どこへでも行けることになることを意味します。それによって自動車が本当に人間のための機械になります。
人々の生活も大きく変わります。
移動の時間がとても早くなります。移動時間が自分だけの自由な時間と空間になります。そして、移動の目的地での時間の使い方が変わります。
さらに物流に大きな変化が生まれます。現在、運送会社での出費の約65%はドライバーの人件費です。このため、1台のトラックで大量の荷物を運ぶのが費用的に効率の良い輸送法です。
もし、自動運転となると、貨物は小分けにして運ぶ方が、早く効率的に輸送が可能となります。
すると、物流の概念も変わります。インターネットで品物を注文すると、自動倉庫から商品が自動運転自動コンテナに移され、同じ都市内であれば、30分以内に買ったものが届くということが現実のことになります。

2007年度より当面3年間の予定で、文部科学省振興調整費、先端融合領域拠点化形成事業において「コ・モビリティ社会の創成」のテーマ研究が採択されました。
これは昔ながらのコミュニティが都市化や核家族化によって崩壊しつつあること、新しいコミュニティとしてネットコミュニティが生まれたけれど必ずしも十分に機能していないことを踏まえて、移動を容易にすることと、コミュニティについての新しい価値およびこれらをささえるITの研究を一緒に行うことによって新しいコミュニティが創成できるであろうという目標を持つ研究です。
私達は、この大きな目標の研究のうち、自動運転あるいは人の移動を遠隔的に支援する技術の開発部分を担当しています。